駅のホームにのびたふたつの影　もうじき最終電車がやってくる
君に伝える言葉が見つからなくて　僕は黙ってうつむいたまま
君と何年一緒に過ごしたのだろう　君とどれくらい同じ道を歩いたのだろう
僕のせつない気持ちを時間は待ってはくれない
表示板が君の乗る列車を無情にも指し示す

「たくさんの想い出をありがとう」　僕の気持ちを察した君の最後の優しさ
君が今　僕から離れようとしている　君が僕の元を旅立とうとしている
でも何もできない自分がもどかしい

やがて暗闇を照らす一筋の灯りが　風をつれてホームへと滑り込む
君は涙を見られたくなくて　振り向きもせずに
デッキへと乗り込み　そのまま車内へと消えて行った
その後姿を　僕はただ呆然と見送った

そして発車のベルが君との別れを告げる
静かに走り出す列車　君の姿が視界から遠ざかっていく
僕は列車を追いかけながら　必死で君の名前を叫んだ
でもこの想いは君にはもう伝わらない　二度と君には届かない
故郷へ向かう君を乗せた列車のテールランプが
涙で滲む僕の中で小さく消えていった

列車が去ったホームにひとり残された僕は　
その片隅で光るリングを見つけた　掌で感じとった見覚えのあるイニシャル
それは君の２４回目の誕生日に　僕が贈った指環・・・

もう無駄だと知りながら　君のぬくもりと残像を必死で探す
なぜあの時言えなかったんだろう
「行くなよ・・・」ひと言告げる勇気があれば今頃はきっと・・
でもそれは覚悟　君との想い出を胸にしまい込み明日から生きていく

最後に君に贈る言葉
「ありがとう　そしてさよなら　僕の大好きだった人」