或る日何気なく買った宝くじで３億円が当たった
その日を境に人生がガラリと変わった

まず僕はすぐ仕事を辞めた　口煩い上司に捨て台詞を吐いて
次に僕は大好きな釣りを思う存分やるために
海の傍に家を建て移り住んだ　船を買い車を新調した

次第に金遣いは荒くなり　生活は派手になった
ありとあらゆる贅を尽くし　毎晩豪勢な食事と浴びるほどの酒
金目当ての甘い顔をした連中が　自然発生的に寄ってきた

そんな豪遊生活が五年ほど続いた末　気づけば金が底を突き　すべてを失い　一文無しに戻っていた
金の切れ目が縁の切れ目　人々は急に背を向け　あれだけ顔色を伺い下手に接していた者まで
人が変わったように冷たくあしらい　或る者は罵声まで浴びせる始末　すべてのものが音を立てて崩れた

僕は人間不信に陥り　人が怖くなり　誰とも接することを拒むようになっていった
仕事にも就けず　日ごと借金は膨れ上がり　やがては住む家も取り上げられた
眠れぬ夜が続き　借金取りから逃げ回る毎日　そして妄想の連続　廃人同然の廃れた生活

気づけば僕は生きる望みを失い　死に場所を探して　夜の街をひとり行き場もないままさ迷い歩いた
周囲の冷たい視線が傷ついた心に突き刺さる　誰かが自分の命を狙っている　
　

やがて無意識のうちに辿り着いたのは
高層ビルの屋上　金網を乗り越え　靴を並べ　
風が背中を押すのを待って　意を決して飛び降りた
まっ逆さまに落ち行く中で見た物は　この世の現実
「神様　僕を助けて！」

そこで僕は夢から覚めた　寝汗をびっしょりかいて

「夢でよかった･･･」

努力なくして夢は叶わないもの
夢は叶えるものだが　叶うと人は豹変する
夢は見ているうちが華なのかもしれない

そう夢が僕に教えてくれた一夜だった